残り2つです。4つの要件、「資産の活用、能力の活用、あらゆるものの活用、扶養義務者の扶養」の『あらゆるものの活用』について、わたしなりの解釈を交えて解説していきます。
あらゆるものの活用
あらゆるものの活用とは、年金や手当など他の制度で給付を受けることができる場合は、まずそれらを活用する。
国民年金や厚生年金、障害年金などが支給される場合は収入充当され保護費が減額されます。
具体例として、1か月の生活保護費総額が11万円(分かり易くキリのよい金額にしています。)とします。年金の支給が2か月に一度10万円だった場合、ひと月あたりの年金額は5万円になります。
年金5万円が収入充当され、支給される生活保護費は生活保護費総額から年金5万円を引いた6万が支給され、合計11万円になります。
つまり、同じ年齢の年金が支給される方と、全く年金を支給されない方の二人の総生活費は同じになるということです。
年金開始前にそわそわされる方が私の施設にいます。理由を聞くと年金が始まれば使える金額が増えると思っているようです。
増えません、1円も。
あらゆるものの活用をした上での生活保護制度なので。
全額返金のケースも!?
また、既に年金が受け取れる年齢を迎えているにも関わらず、請求手続きを全くしていない方が、生活保護の申請後に役所調べにて年金を受け取れることが分かる場合があります。数年間に渡り受け取っていなかった年金が合計数百万円になる方もいらっしゃいます。
その場合、現在の生活保護を受給している役所から受給した生活保護費の戻入(役所に返納すること)が発生します。
例
数年間受け取れていなかった年金があり、一括で200万円受け取る場合
ケース1
三年前から生活保護を受給していて、月額の生活保護費が11万円
今まで受給した金額は、11万円×36カ月=396万円になります。
受け取った200万円の年金は全額戻入となります。
その後は2か月に一度支給される年金の半額(1か月分)が収入充当され、生活保護に年金を併用した生活になります。
ケース2
2カ月前から生活保護を受給していて、月額の生活保護費は上記と同じ11万円とします。
今まで受給した金額は、11万円×2カ月=22万円
受け取った200万円から22万円を戻入して、残った178万円と2か月に一度ある年金を元に生活をして下さい(生活保護は廃止になる)となります。
殺傷事件に発展
上記のケース1で私の施設ではないですが、以前事件が起こりました。
長年生活保護を受けていた方がケースワーカーから一括戻入を求められ、激昂し役所内でケースワーカーを包丁で刺す事件がありました。
なぜ年金を戻入しなければならないか?の部分を丁寧に説明していたのでしょうか?
判決でも理解力の乏しい方だということでした。
役所からお金を返せと言われて、頭にきて包丁で刺してしまう人ですよ?
一人ひとりとしっかり関わっていくのは大変だと思いますけど、こんな事件にならずに済む方法があったのではと思います。
ひとり空想
報道では懲役8年数か月の判決となっていました、出所したらもうおじいちゃんですよ。こんな事件を起こすくらいなら、年金が入る直前に生活保護を辞退するか失踪してしまい、きれいさっぱり年金を使い果たした後に再度生活保護を申請すればよかったのではなどと空想してしまいます。
つづき→生活保護制度⑤
※当ホームページに記載されている内容は実際に管理人が体験した経験談ではありますが、地域により同じ手法が通用しないことがあります。実際に私が施設長をしている無料低額宿泊所がある都市でも、区が違えば対応も違うことが多々あります。知的好奇心を満たす読み物としてご理解頂きますようお願い申し上げます。
生活保護な人たち 管理人