厚生労働省の無料低額宿泊所の設備及び運営に関する基準には社会福祉法第二条第三項第八号に規定する生計困難者のために、無料又は低額な料金で、簡易住宅を貸し付け、又は宿泊所その他の施設を利用させる事業を行う施設(以下「無料低額宿泊所」という。)とあります。
ここでは無料低額宿泊所を利用するにあたり、どういった経緯で入居するのか?どんな人たちが暮らしてしるのか?また自立できる方の割合はどのくらいなのかなど、無料低額宿泊所の施設長である私の目から見えた景色と、考えなどを書いていきたい思います。
全国の無料低額宿泊所の数
令和2年9月末に行われた厚生労働省による「無料低額宿泊事業を行う施設の状況に関する調査結果について」では、全国の無料低額宿泊所の総数は608施設となっています。
全体の定員16,397名のうち被保護者数は15,183名となっていますので、無料低額宿泊所に入居されている92.5%の方が生活保護を受給していることになっています。この数字は私の施設でもほぼ同様です。
仕事や住居を失った方
最近で一番多いのが、仕事や住居を失って相談に来られるケース。
中でも派遣社員として働いている方が何らかの事情(仕事についていけない、職場の人間関係など)で仕事を辞めてしまうと、派遣会社が提供している住居に住んでいる方が多いので、同時に住居も失ってしまう。
仕事を失ったら住居も同時になくなる…何だか恐ろしいなと思います。
中には病気やケガの為に、仕事を辞めざるを得ない方もいらっしゃる筈です。そんな状態の方がいきなりホームレス…
通常の賃貸であれば家賃の滞納があっても、いきなり退去はないと思うのですが。
家賃の滞納から
病気やケガが原因で仕事ができずに収入が途絶えてしまったり、このことにより家賃滞納が続き、法的手続きや賃貸会社から強制退去を言い渡されてしまうケースです。こういう内容の相談は聞いていて本当に心が痛いです。
仕事もしていて収入はあるのに、ギャンブルや飲酒に明け暮れ家賃の滞納を続けてしまい、強制退去させられ住むところがなく困っている…こういう方は人間的な責任感が希薄であり、まさにその部分が病巣なのですが入居されても何らかのトラブルを起こして、退去される方が多いです。
刑期を終えられたら方の生活先として
刑務所での刑期終了が近づくと、刑務所を出所した後の行き先をどうするのか、相談できる社会福祉士などが刑務所内にいらっしゃるようで、出所日の数か月前からご連絡頂くことがあります。
また自立準備ホームとして保護観察所に登録している無料低額宿泊所もあります。そういった施設は入居の相談が保護観察所からあります。
精神病院を退院した後の入居先として
数年間の入院生活から退院許可が下り、お問い合わせ頂くケースもあります。情報の少ない病院内でどうやって私の施設を知ったのか聞くと、以前ご入居されていた方(精神病を患っている方)が現在入院されているようで、情報交換して知ったと仰ってました。
こういった方が入居された後にお話を聞くと、精神病院では退院後の入居先を探してくれることはあまりないようです。(あくまで病院から退院し入居された方の聞き取り内容です。)その為、退院できる状態の方でも入居先を探す術がなく、入院が長引いているケースがあると聞きました。
事実ではないことを願いたいです。
役所経由で
役所に生活保護のご相談に行かれた際に、無料低額宿泊所の一覧を渡されご自身で連絡をしてくるケースもあります。
また無料低額宿泊所は都市部に集中していますので、近隣他市県の市役所から直接入居のご相談を頂くこともあります。入居者の方には何処からお金が出るかなんてあまり気にしないところですが、この場合の生活保護費はご相談頂いた市役所から支給されるのが通例です。
まとめ
10数年ほど前までは、夜になると駅や公園にホームレスが溢れ返っている時代がありました。街頭相談時にこういった方たちの相談を聞き、入居に至るケースが大半を占めていたと記憶しています。
しかし現在では都市中心部の駅は綺麗に整備開発され、ホームレスの居場所も無くなってきています。また無料低額宿泊所のような場所に移住したことも要因のひとつであり、ホームレスの数は減少しています。
現在の入居に至るまでのケースを見ると時代の変容を感じます。ホームレスの数は減少しているのに生活保護世帯の数はピークから少し減少している程度です。
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つづき→無料低額宿泊所とは②
※当ホームページに記載されている内容は実際に管理人が体験した経験談ではありますが、地域により同じ手法が通用しないことがあります。実際に私が施設長をしている無料低額宿泊所がある都市でも、区が違えば対応も違うことが多々あります。知的好奇心を満たす読み物としてご理解頂きますようお願い申し上げます。
生活保護な人たち 管理人