警察庁生活安全局による「令和4年における行方不明者の状況」では、令和4年は統計の残る昭和31年以降で最少を記録した令和2年から2年連続で増加し、8万4,910人(前年比5,692人増加)となった。
原因・動機別では、疾病関係が24,719人(構成比29.1%)と最も多く、このうち認知症又はその疑いによるものは18,709人(構成比22.0% 。)疾病関係に次いで、家庭関係の12,899人(構成比15.2% 、事業・職業)関係の9,615人(構成比11.3%)の順で多い(その他、不詳を除く )
今回の行方不明者
Hさん71歳男性、数年前に熱中症により横紋筋融解症を発症、後にパーキンソン病も発症して現在要介護3
歩行に関しては不安がある為、現在歩行器を使用。トイレには自身でも行けるが排尿障害もありオムツを使用中。
散歩
その日は13時頃にHさん宛に、担当しているケアマネさんが面談をしに私の施設を訪れました。そのあと14時頃だったと思いますがリュックを背負って歩行器を使い、出かけようとしているHさんを見かけました。ただの買い物か散歩だと思って、大して気にとめなかったと記憶しています。
夕食
食堂まで段差があったり、食堂内の混雑を考えてHさんの食事は部屋へ運んでいます。いつものように食事の時間になったので、スタッフが部屋に食事を運びました。
ここで初めてHさんがまだ帰って来ていないことに気がつきました。14時に出かけて17時少し前です。まだ微妙な時間帯でしたし、最近少し調子が良かったので外でのんびりしてるのかとも思いましたが、夕食時に飲んで頂く薬もありましたので念のためケアマネさんにも連絡しました。心配して頂いてデイサービスのスタッフに声掛けして、近所を見回りしてくれると言って下さいました。
可能性
20時を過ぎて未だに帰ってこないHさん。ここで考えられる可能性を出していきます。経験的に一番可能性が高いのが、散歩の途中で転倒して病院に搬送されている。本人が住居の説明ができれば病院から連絡がくる筈。
次に考えられるのが失踪。無料低額宿泊所に限ってのことではないと思いますが、失踪する方は一定数います。ただHさんに関しては可能性は低いと思います。長年暮らしているし、次の行く場所を探す能力は低い。
最後は最悪のパターン、ただこれは無いと思います。決めつけてはいけませんがHさんはその勇気は持ち合わせていません。
ということで、病院に搬送された可能性が高いと考え警察への捜索願いは翌朝まで待つことに決めました。
その日の夜は施設の最寄り駅や公園などを一通り巡回して、施設に戻りました。
一台のタクシーから
病院からも警察からも何の連絡もないまま翌朝を迎えました。
入居者の方の朝食の時間も終わり、いよいよ警察に捜索願いを出さないとダメかなと思っていたところ…施設の前に一台のタクシーが止まりました。
もしやと思いタクシーに近づくと中からHさんが降りてきました。
顛末
無事に施設に辿り着いたHさんに事務所へ入ってもらい、昨日からの行動の聞き取りをしました。
歩行器を使って歩ける今のうちに墓参りに行こうと思い、電車を使って郊外にある実家の墓へむかったそうです。その後不自由になった自分を悲観して、海に入ろうと考えてみたようですが、自分の田舎は山に囲まれ海に面していない地域だったので諦めたそうです。
夜は街中を徘徊して、朝になってから電車に乗車して施設近くの駅まで来たところ転倒して病院に救急搬送されたようでした。
確かに数年前までは仕事をされていて自費で私の施設に入居していましたが、病気をしてから生活保護になり体も急激に衰えていきましたし、まだ気持ちが追い付いていないのかもしれません。
面談を通してHさんの気持ちを理解していければと思います。
※当ホームページに記載されている内容は実際に管理人が体験した経験談ではありますが、地域により同じ手法が通用しないことがあります。実際に私が施設長をしている無料低額宿泊所がある都市でも、区が違えば対応も違うことが多々あります。知的好奇心を満たす読み物としてご理解頂きますようお願い申し上げます。
生活保護な人たち 管理人