心肺停止

エピソード 003 生活保護

心肺停止とは、心臓と呼吸が停止した状態を指す。CPAとも呼ぶ(英語: Cardiopulmonary arrest の略)。日本のメディアでは、医師による確認が済んでいない遺体を「死亡」ではなく「心肺停止」と表現する(明らかに亡くなっている場合でも、医師が判定するまで法律上は生存扱いになる)。国際的には心停止(英: cardiac arrest)の呼称が一般的である。(Wikipediaより)

駆け降りてくる足音

×月某日、上の階から勢いよく階段を降りてくる足音が、施設の買い出しのため外出先から丁度帰ってきたタイミングで聞こえてきました。

「大変です!4階トイレで血だまりができてます!」

そう教えてくれたのは、厨房の手伝いをしてくれているKさんでした。私は近くに居た班長のMさんと一緒に、4階まで階段を駆け上がって行くのでした。

開かない扉

4階のトイレに着くとすぐにわかりました。一番手前の大便用個室の地面が血だまりになっています。下から覗き込むと足先だけ見えて中に人が居ることがわかりました。

トイレ入り口に脱いであるサンダルを見て、「これはAさんのです!」と班長が教えてくれました。(サンダルで誰かわかるなんて、すごい!)

「Aさん!Aさんっ!」扉をノックしながらAさんの名前を呼びますが全く応答がないです。

「Aさんっ!」扉が施錠されているので中で何が起こっているのか分かりません…まさか自○?

もう一度下から覗き込むとさっきは見えなかった腕が、力無くAさんの足先まで下がってきてました。その指先は血の気の引いた色をしていました。

(マズい)直感的にそう思った私は班長に向かって叫びました。「下からバール持ってきてっ!大きなやつ!」

班長がバールを取りに行っている間に、Aさんの状況は分からないままでしたが119番に電話を掛けました。

119番「救急ですか?消防ですか?」

私「救急です」

119番「これから救急車が向かう住所を教えて下さい」

私の施設の住所を伝えて、現在の状況も伝えました。すぐに向かうとのことで電話を終えました、それと同時に息を切らせながらバールを持った班長が来てくれました。

開いた扉から…

扉の少しの隙間にバールをねじ込み、無理矢理扉を開けました(壊れました)。扉が開くと同時に便座に座っていたAさんがこちら側に倒れてきました、すぐに支えて便座に座らせましたが口と鼻から大量に吐血しています。

「Aさん!Aさんっ!!」外から救急車のサイレンが聞こえてきました。

Aさんが倒れ込まないように班長に任せ、私は救急隊員の誘導をするため玄関まで走りました。

到着した救急隊員たちが準備をしている間に、Aさんの個人情報を伝える為パソコンを開きました。

A.T.さん54才病歴不明、現在○○(行政名)にて生活保護を受けています、生活状況として慢性的に飲酒をしています。

救急隊員の他に救命士も到着していました。情報を共有したあと現場は4階トイレだと伝えると、一斉に上がっていきました。

響きわたるAEDのアナウンス

Aさんの状況を確認した後すぐにトイレの個室から洗面所に移動して仰向けにされました。胸部圧迫(心臓マッサージ)が始まり別の隊員はAEDのパッドをAさんのカラダに貼り付けていきます。

「離れて下さい、診断します…AEDの必要はありません。胸部圧迫を続けて下さい。」

~AEDの必要はない…これは心肺停止の状態が続いていて危険な状態が続いていることを示しています~

再度救命士の胸部圧迫(心臓マッサージ)が始まり圧迫回数を数えています、30回ほど胸部圧迫をしてAEDの診断の繰り返しです。

「離れて下さい、診断します…AEDの必要はありません。胸部圧迫を続けて下さい。」

AEDの機械的な音声だけが続き、AEDを使用することはありませんでした…

5クール目くらいでしょうか、救急隊員から「我々も出来る限りのことはします、このあと病院へ搬送しますが一緒に来れますか?」

「後から車で伺います」

救急車は鳴り響くサイレンと共にAさんを連れて行くのでした。

 

つづき→心肺停止②

 

 

※当ホームページに記載されている内容は実際に管理人が体験した経験談ではありますが、地域により同じ手法が通用しないことがあります。実際に私が施設長をしている無料低額宿泊所がある都市でも、区が違えば対応も違うことが多々あります。知的好奇心を満たす読み物としてご理解頂きますようお願い申し上げます。

生活保護な人たち 管理人

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