本日は以前に書いた、コンビニ強盗未遂事件の裁判の傍聴に行きましたので、被告人となったTさんの様子と裁判の内容について書いていきます。
開廷表
法廷内に入る前に開廷表が壁に貼ってあるので、念の為これから入る法廷で間違いがないか確認します。
第○○号法廷 開廷表
令和○年○月○日
開廷表とは、その日この法廷で行われる裁判が書かれているもので、本日は四件の裁判が時間ごとに書かれています。上から二番目にTさんの名前を見つけました。事件名は「強盗未遂」ではなく「恐喝未遂」となっていました。
法廷の扉を開けると、ひとつ前の裁判がまだ終わっておらず、裁判中でしたが空いている座席に静かに座りました。裁判の傍聴は誰にでもできるので、関係者ではなくても中には裁判マニアのような方もチラホラいました。
今行われている裁判は、被告人の女性が常習的に万引きを行い、現在は精神科での治療を行っているという内容のようです。以前万引きでも刑務所に行ってしまわれた入居者もいたので、真剣に治療に専念して頂きたい。
被告人Tの裁判
そうこうしている内にその女性の裁判が終わり、時計を見るとTさんの裁判開廷時刻を7分ほど過ぎていました。
書記の方が慌ただしく被告人席の扉の向こうにある部屋をノックして、「被告人は中へ」と声をかけています。
弁護士は当然入れ替わりましたが、検察官はどうやら先程の裁判と同じ人が行うようです。因みに私がTさんの裁判日程を教えて頂いたのはこの弁護士からです。
扉の向こうから緑色の作業着のような上下姿に(これは前回別の入居者の裁判でも同じものを着ていました、オレンジ色だったらアメリカ映画の囚人服だななんて思い)、体の前につけた手錠には縄が繋がれ、警備の人間が二人Tさんを挟むように法廷内に連れてきました。
裁判官: 被告人はそちらの席に座って下さい。
縄をほどかれたTさんは手錠を付けたまま、着席しました。
裁判開始
裁判官: 被告人は前へ
Tさんが名前、本籍、現住所、職業(無職)を言った後、再び被告人席に戻されました。
検察官: それでは起訴資料を読み上げます。
被告人はコンビニエンスストアの従業員から現金を脅し取ろうと考え、令和○年○月○日午後 0 時 30 分頃○○市○区○丁目○番 セ○ンイレ○ン○○○店にて、同店従業員○○36 歳に対し、レジカウンター越しに手に持ったカッターナイフの刃先を示し、「お金を出せ、殺すぞ」などと言って現金の交付を要求し、もしこの要求に応じなければ、当人の身体等にいかなる被害を加えかねないことを示して怖がらせ、同人から現金を脅し取ろうとしたが、同人がこれに応じなかったため、その目的を遂げなかったものである。
罪名は刑法第250条(未遂罪)第249条(恐喝)です。
この内容は当時ニュースで知ったものとほぼ同じでした。
黙秘権
裁判官:被告人は前へ
再びT被告人を証言台の前に立たせた後に黙秘権の説明が始まりました。
裁判官:審議を始める前に黙秘権について説明します。あなたには黙秘権があります。
答えたくない質問について、最初から最後までずっと黙っているということもできます。裁判ではあなたが話さないことで、あなたを不利に取り扱うということはありません。
また、あなたが質問に答えたい場合には質問に答えることができます。ただし、あなたがここで話したことはあなたにとって良い悪いを問わず、証拠として使われることがあります。質問に答える場合には、そのことに注意してください。
生い立ちから犯行前まで
被告人は中学校を卒業後、自動車部品製造会社、旅館での調理師見習い、自動車修理、会社従業員等の職を転々としていた。
約10年前からは定職につく就くことなく、年金及び生活保護を受給しながらの生活していた。
被告人は2度の離婚歴があり、事件前までは無料低額宿泊所で生活していた。
前科5犯、直近前科の執行終了は平成○年○月○日となっております。
被告人は令和○年○月頃から無料低額宿泊所に入所し、支給される生活保護費と年金の中から宿泊費、水道、光熱費、毎日の3食の食事代を含めた利用料を清算して毎月1日に 25,000円の現金を施設長から受け取っておりました。
令和○年○月○日に施設長から現金 25,000円を受け取りましたが、翌日までの間にタバコ代と酒代、競輪でのギャンブルで全て使い果たしている。
犯行内容
検察官:本件、犯行当日被告人は知人から1,000円を借り、パック入り焼酎を購入して飲酒し、その後別の知人に借金を申し込みましたが断られました。
その後、被告人は付近の100円ショップでカッターナイフを購入しました。
被告人は同日午後 ○ 時○○分頃本件犯行現場となったコンビニエンスストアに入店すると、当日午後○時○○分頃レジでカップ焼酎の清算を済ませました。その直後被告人は控訴事実のとおり犯行に及びました。
被告人はレジカウンターにおいて、ズボンのポケットに入れていたカッターナイフを取り出し、刃を出すとカッターナイフを持った右手を従業員に向かって突き出し店員に向けて示し、お金を出せ、殺すぞなどと言った。
女性従業員を脅しながら金銭の交付を要求しましたが、同女性従業員はその要求を拒否。
被告人は現金を奪うことを諦めると店を出て逃走を開始しました。被告人は犯行の約2時間後、地下鉄駅構内に入ると同日午後○時○分頃改札外に設置された公衆電話にて110 番通報し、近くのセブンイレブンで強盗をして逃げている途中であることを伝えた。
逮捕
この後、駆けつけた警察官によって逮捕となるのですが、自ら警察に110番通報していたのは裁判に傍聴しに行かなければ分からない内容でした。この後、被告人に対しての質問や刑の終了後の生活はどうするかなどの話しがありました。
検察は懲役2年の刑を求め、弁護士は特に争うことなく、被告人は充分反省しており寛大なる判決を望むということで審理は終了しました。
近い将来、Tさんが私の無料低額宿泊所を訪れに来て、行き場がないのでまた入居させてほしいと言ってきたら私はどうするのでしょうか?
私は受け入れます、何故ならここは無料低額宿泊所だから。
※当ホームページに記載されている内容は実際に管理人が体験した経験談ではありますが、地域により同じ手法が通用しないことがあります。実際に私が施設長をしている無料低額宿泊所がある都市でも、区が違えば対応も違うことが多々あります。知的好奇心を満たす読み物としてご理解頂きますようお願い申し上げます。
生活保護な人たち 管理人