私の施設では毎日様々な経緯で生活や住まいに困り、ご相談を受けてご入居に至ります。どのようなケースの方がいらっしゃるのか、こちらでご紹介していきます。
深夜の電話
午前一時ごろ、私の携帯電話が鳴りました。画面を見ると、当団体が別の区で運営している施設長からでした。
交番からの問い合わせで、終電時間になっても駅構内で座り込んでいる男性を保護しているので、相談に乗ってくれないかと。これから迎えに行くので、私の施設で入居相談をお願いしたいとのことでした。
電話の内容はTさん31の才男性、おそらく自閉症であり他者とのコミュニケーションが苦手、実家に父がいる、某テーマパークに行くつもりだったが、全く異なる地へ来てしまった。駅員から警察に通報があり保護されたといった内容でした。
私は自宅に居た為、施設に連絡をして受け入れの準備と、その男性が空腹であれば食事の提供もお願いしました。また詳しい話しは翌朝の面接で聞くので、今夜は部屋で休んでもらうよう伝えました。
ぬいぐるみ
翌朝、昨夜の男性はどんな方なのか考えながら施設に向かいました。今回は少し特殊なケースになるような気がしながら。
施設に到着してデスクに座り、美味しくもないインスタントコーヒーを一口飲んでから職員に昨日の方を事務所に呼ぶようお願いしました。
しばらくすると職員に連れられてその方が来ました。うつむいたまま事務所に入ってきたその男性は、とても大事そうに『ぬいぐるみ』を抱き抱えていました。
面談
私:「はじめまして、この施設の責任者をしていますRと申します、宜しくお願いします。」
Tさん:「………」
私:「お名前はTさんで宜しいですか?」
Tさん:「……あ、はい。」
やっと返答が返ってきたその声は、男性とは思えないほどとても高いキーでした。
私:「昨夜は何故駅構内で座っていたんですか?」
Tさん:「……」
目を合わせようとしないで、中々会話が難しいこと、また『ぬいぐるみ』に強い執着を持っていることなど自閉症の特徴には当てはまっていました。
私:「ご両親はいるのかな?」
Tさん:「……」
私:「家はあるの?」
Tさん:「……○○県にあります。」
私:「そこには誰が住んでいるの?」
Tさん:「…お父さん」
会話が繋がってきた気がしたので、もう少し踏み込んだ質問をしたところ思いも寄らない返事が返ってきました。
私:「家には帰らなくていいの?」
Tさん:「………あっ、お父さんに聞いて下さい。」
ここで改めて深刻なケースなのではと思いました。家に帰るか帰らないかを父親に確認しないといけない方が、家からかなり遠方までひとりで来て警察に保護されていた。初めは単なる家出かと考えていましたが、そうではない気がしてきていました。
父親への電話
私:「じゃあ、これからお父さんに電話してどうするのか聞いてみてもいい?」
Tさん:「………はい。」
Tさんが教えてくれた父親の携帯電話の番号に電話をかけることにしました。
プルルルルル…プルルルルル…
7回ほどコール音がした時、通話が繋がり「はい、○○です…」と受話器で向こうの父親の声がしました。
※当ホームページに記載されている内容は実際に管理人が体験した経験談ではありますが、地域により同じ手法が通用しないことがあります。実際に私が施設長をしている無料低額宿泊所がある都市でも、区が違えば対応も違うことが多々あります。知的好奇心を満たす読み物としてご理解頂きますようお願い申し上げます。
生活保護な人たち 管理人