本日の相談者 31才男性②

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父親との電話

プルルルルル…プルルルルル…

7回ほどコール音がした時、通話が繋がりました。

私:「お忙しいところすみません、私○○で無料低額宿泊所の施設長をしておりますRと申しますが、Tさんのお父様でよろしかったでしょうか?」

父親:「はい、そうですが。」

落ち着いた、そして優しそうな印象の声でした。私は昨夜Tさんを保護した経緯を説明しました。

私:「実は昨夜なんですが、○○駅構内で座り込んでいるTさんを駅員が発見して警察に通報されまして、その後私の施設で保護している状況なんです。」

父親:「それはご迷惑をかけまして。」

ここまでのやり取りでは、Tさんは父親の元へ戻って一件落着と思っていました。

私としてはTさんは何かのきっかけで遠くまできてしまった。知的な問題もあり、どうすればいいのか分からないので「お父さんに聞いて」と言ったんだと。

 

父親の回答

私:「それでTさんに家に帰らないのかと聞いたのですが、お父さんに聞いて下さいと仰ってまして。」

父親:「そうですか、私の家は○○県の山奥にありまして。近くでしたら迎えに行けるのですが、体力的にもそちらまで迎えに行くのが難しいので、何とかそちらで生活できないでしょうか?障害年金ももらっているので。」

そういう父親の言葉から少しずつ違和感を感じました。知的に問題を抱えた息子を私の施設で生活させる?

私:「障害年金の受給額にもよりますが、生活保護と併用になると思いますけど宜しいですか?」

父親:「それでお願いします、それにB型就労(就労継続支援B型事業所)に行ってたこともあるんですよ。」

私:「わかりました、今日中に役所に生活保護の相談に行くと思います。その時、役所の方からお父様にご連絡が行くと思うので、宜しくお願い致します。」

それで電話を切りました。父親はある程度高齢で体力も余りない、近くであれば迎えに行けるが今回は中々難しい。それらしい話しでしたが、障害のある息子が遠い地に行ってしまったのに心配ではないのだろうか。そんな思いもありましたが、今はここでの生活を考えなくてはいけません。Tさんと入居契約を取って、役所に生活保護の相談に向かいます。

 

生活保護申請

事前に役所へ連絡を入れて、生活保護申請の面談担当員に父親との電話での内容を説明しておきました。

Tさんの執着しているもので「ぬいぐるみ」の他にも、「花」に強く執着しているようでした。役所に行く直前にも、「花を見にいきたい…」と言ってきました。

私:「じゃあ、15分くらいで戻ってこれる?」

Tさん:「…はい。」

その後、彼は一時間ほど帰って来ませんでした。

役所に向かっている車の中で少しでも打ち解けようと、いろいろな話しをするのですが「…はい」という返事のみで会話が続きません。

 

面談

面談が始まり少し時間が経過したころ、面談部屋から担当の面談員が出てきて私の元に近づいてきました。

面談員:「この方はやはり自宅がありまして、単なる家出の可能性もあるのですが、中々会話が進まないです。一度父親に連絡をしてみます。」

そういうと面談員は自分のデスクに戻り父親に電話をかけ始めました。私はソファーに座り今回のことをもう一度考えました。

 

私の考え

考えられることは二つ。

父親は今後歳を取っていくにつれて息子の将来が心配になり、何とか自立した生活をそろそろ考えなくてはいけなくなり、遠い地へ息子を行かせた。

もうひとつは長年障害のある息子の面倒を見てきたが限界に達した為、息子の面倒を見ることから離脱した。

しばらくすると面談員が私の元へ向かってきました。

面談員:「こちらで保護することになりましたので、生活保護の申請を受理します。」

窓の外を見ると夕日になった柔らかな太陽の日差しが、役所の中を照らしていました。

面談員が父親とどんな話しをしたのかは分かりません。私の施設で生活をしていかなければならない、そうであれば私は受け入れます。

何故ならここは無料低額宿泊所だから。

 

 

※当ホームページに記載されている内容は実際に管理人が体験した経験談ではありますが、地域により同じ手法が通用しないことがあります。実際に私が施設長をしている無料低額宿泊所がある都市でも、区が違えば対応も違うことが多々あります。知的好奇心を満たす読み物としてご理解頂きますようお願い申し上げます。

生活保護な人たち 管理人

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